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今回のクルマはトヨタのプレミオ・アリオンです。
このクルマ、トヨペット・コロナの時代を含めると、なんと13代目、50年にもなる長い歴史を持っています。当初、マークIIと同じような派生車種として登場したものの、本家の消滅により後継車となったのは記憶に新しいところでしょう。また、5ナンバー枠の中型セダンというスタイルを堅持し続ける数少ないクルマでもあり、トヨタの考える「最新のスタンダード」を知るには最適といえます。そんなプレミオ・アリオンについて検証していくことにしましょう。
まず外観からですが、これぞトヨタの王道、キープコンセプト、80点主義の具現化といえるフォルムです。品質感は驚くほど高いのに、心に引っかかるところは皆無で、日々の生活に溶け込んで存在を消してしまうという、いつものトヨタスタイルは、「クルマ命」でないごく普通の自家用車ユーザーからは支持されるに違いありません。
多少マニアックな話をすれば、スタイリングが先に発売されたカムリの流れを汲んでいたり、プラットフォームは先代のキャリーオーバーだったりするのですが、このクルマにとって然程重要なことでもないでしょう。また、プレミオとアリオンでは若干デザインテイストが違いますので、好みで選べばよいと思います。
各部の造り・建付け等は文句なしに上等で、このクルマが世界の標準を作るといっても良いのではという気すらしてきます。
内装についても然り。もうこれ以上何を望むというくらい至れり尽くせりの装備とクオリティーに圧倒されますが、しばらくするとそれも当たり前になってしまうんですよね。操作系の使い勝手も、奇をてらったところがないので良好です。ただ、トヨタ初採用の艶消し木目調パネルだけは、目の凹凸までついている本格派？なのですが、実物は思ったより安っぽかったのがチョッと気になりました。
室内空間自体は先代同様5ナンバー車としては充分以上に広く、一般的な使い方だったら不満は出ないだろうと思います。各シートの作りも思ったよりしっかりしており、カローラほど柔らかくなく、欧州出来のアベンシスほど硬くはないという絶妙な設定で私は気に入りました。でも、前席は太いAピラーが目前に迫ってきて、かなり圧迫感があります。安全性確保のため仕方ないという説明でしたが、これはもっと上手い設計をして欲しかったものです。一方、後席は膝まわりのゆとりもあり、大人2人が長時間寛いで乗っていられそうです。3名分のヘッドレスト＆3点式シートベルトも標準で、この辺、トヨタは抜かりありません。
トランクルームは先代からの美点で広大なものですが、今回は後席がダブルフォールディングでなく、背もたれを倒すだけになってしまったため、トランクスルー時の床面に傾斜が出来てしまうのが残念でした(ちゃんとダブルフォールディング出来る事を後から確認しました。ゴメンナサイ････07,7,16)。また、作り自体は良くなったものの、取り外し不可となったリアパッケージングトレイも功罪相半ばといったところでしょう。確かにマルチパーパスという面では退化しましたが、依然、セダンプラスアルファーとしての魅力は残っており、トータルでは悪くないと思います。
試乗しました。SU-LEV、可変吸排気バルブタイミング機構付1.8リッター4気筒16バルブDOHCエンジンにCVTを組み合わせたプレミオ1.8X Lパッケージ（2WD）です。
まず、チルト＆テレスコピックステアリングとシートリフターのおかげで、きめ細かいドライビングポジション調整が出来るのは好印象････先の後席3名分3点式シートベルトといい、最大手メーカーが率先してこのような装備を標準化することには大賛成ですね。願わくば、サイド＆カーテンシールドエアバックも標準だったらもっと良かったのですが、これは今後に期待したいと思います。
さて、走り出しても、ショールームで見て触った感じの延長で、まさに「中庸」という印象です。乗り心地もカローラとアベンシスの中間ぐらいで悪くありません。エンジン＆トランスミッションは先のオーリスと同じユニットですからスムーズさとパワーは実証済みなんですが、実際乗った感じではこちらの方がよりマイルドに感じました。発進時に若干CVT独特のもたつきが残っていましたが、まあ、普通に街中で使ったり、ロングクルージングをゆったり楽しむといった用途であれば不満はまったく出ないでしょう。いれずにせよ、先代の2リッターに搭載されたCVTに比べれば格段の進歩といえます。
あと、私が気に入ったのは、スタッカートゲート式シフトのフィーリングと絶妙なポジション設定です。ちょっとした下り坂でエンジンブレーキが欲しい時など、Dから横にポンと倒すだけで入るSポジションが実に手軽で便利でした。更に下にはBというポジションもあるんですが、余程の時でもない限り使うことはないでしょう。これなら、シーケンシャルモードが無くても、充分キビキビとした走りを楽しむことが出来ると思います。
その他、前後左右の見切り、小回り性能、ブレーキの効きなどにも問題はありませんでした。
総評です。
プレミオ・アリオンから終始一貫して伝わってくるのは、先にも書いた「中庸」の一言です。更に先代に比べ、このモデルでは、より一層「セダン度」が増し、落ち着きや重厚さのようなものを感じさせるようになってきました。これが、同じ中庸でもカローラより「一クラス上」と実感させられる所以でしょう。
プラットフォームは、以前私も乗っていたビスタ(1998年登場)から続く古い？ものですが、元々の設計が良かった上、しっかりブラッシュアップさえすれば何の問題も無く使い続けられるということをこのクルマは実証しています。
普通の人が普通に使えるクルマを高品質の割に安価で提供する････トヨタの、この変わりない姿勢にはいつもの如く脱帽というほかありません。
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