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今回のクルマはスバルのインプレッサです。
先代まではWRXというラリーベースのモデルばかりがもてはやされ、どちらかというと「走り屋御用達」のスパルタンなクルマという印象の強かったインプレッサですが、この3代目では、欧州でポピュラーな5ドアハッチバックをメインに据え、より多くのユーザーに訴求しようと考えたようです。また、国際基準を視野に入れてプラットフォームから新設計したため、サイズはついに3ナンバー(全幅1740mm)となりました。
この、全く新しい車型・プラットフォームを纏って新登場したインプレッサについて見ていくことにしましょう。
まず外観からですが、リアハッチの傾斜が強いクーペライクなスタイリングで流麗さは感じられるものの、個性や斬新さという点では若干疑問があります。私はフォード・フォーカスやマツダ・アクセラ、BMW1シリーズ等との類似性を強く感じてしまいました。ただ細かく見ていくと、ロー＆ロングノーズにショートデッキのシルエットは、水平対向エンジン搭載車独特のものだったりします。各部の造り・建付け等はゴルフには敵わないものの、最新の日本車としてはまずまずの出来といえるでしょう。特に、こだわり続けていたハードトップを止め、サッシュドアを採用したため、全体にしっかり感が増したような気がしますし、何より後部座席への乗降性が大幅に向上しました。
インテリアは、最近のスバル車に共通の翼型ダッシュボードで、操作性・質感ともに満足いくものです。また、今回からブラック系内装に加え、明るいアイボリー系内装(スバル車には珍しくステアリングまでアイボリー！)も選べるようになったのは朗報です。
前席シートは、2リッターターボのS-GTがバケットタイプ、1.5リッターと2リッターのノーマルエンジンを積む15Sと20Sが標準タイプとなりますが、どちらもしっかりした造りで細かい調整が効き、座り心地も上々でした。後席とその空間は、大人2人が長時間乗るに足るものですが、ヒップポイントはやや低めで、ゆったり快適とまではいきません。でも、それには理由があって、先代まであったワゴンの代わりとして使われることを見込んでラゲッジスペースを重視したため、ある程度の「見切り」が必要だったのです。その分、背もたれを倒すだけで簡単にフラットになるうえ、リアサスの出っ張りも少なく横方向にゆとりのある荷室床面や、各所にきめ細かく配置されたカーゴフック等々が、ワゴンから乗り換えたヘビーユーザー達を満足させるに違いありません。
試乗しました。SU-LEV、可変バルブタイミング機構付水平対向1.5リッター4気筒16バルブDOHCエンジンに4速シーケンシャルモード付ATを組み合わせた15S（2WD）です。このクルマは、いわば廉価版ベーシックモデルという立場にありますが、回頭性に優れた軽量エンジンとこれまた軽量なFFの相性はバッチリで、隠れたお勧めモデルといえるかもしれません。
そして走り出すと、大人びた上品でしなやかな乗り心地に感心させられます。 これには、横剛性を確保しながら柔らかめなセッティングを施された新設マルチリンク(ダブルウィッシュボーン)リアサスペンションの功績が大きいでしょう。確かにこのモデルはエンジンパワーも程々で、タイヤも195/65R15といたっておとなしいものですが、これなら2リッターターボとAWD、17インチタイヤの組み合わせでも然程「荒れた」感じにはならないのではないでしょうか。先代まではスポーティーでキビキビとした印象がある一方で、どうしても粗野な印象は否めませんでしたから大変な洗練振りです。
その他、エンジンとATのマッチング、パワー、静粛性、ステアリングフィール、ブレーキ性能、小回り性能とも特に問題はないものの、左右方向の見切りだけは、マツダ車同様ショルダー部分が張り出しているボディー形状のため注意が必要でしょう。でも、運転席からボンネット先端は良く見え、トータルでは運転し易いクルマだと私は感じました。
総評です。
このインプレッサ････実にスバルらしく真面目に作られた好感の持てるクルマだと思います。伝統の水平対向エンジンとAWDシステムも熟成に熟成を重ね、もはや完成の域にあるのですが、それでも毎年のように細かな改良を加え続けているのだそうです。オプションながら、ESPやサイド＆カーテンシールドエアバック、テレスコピックステアリング、後席3名分3点式シートベルトなどが選べるのもいいでしょう。
ただ、せっかくトヨタと資本提携を結び、部品供給も始まったというのに、アイシンご自慢の6速ATやCVTの搭載が見送られたのはいかにも残念としかいいようがありません。また、先にも書いたように、キャラクターの「薄さ」も気に掛かります。
まあ、それでも「分かる人には分かる」わけですが････
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