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今回のクルマはBMWの1シリーズです。
1シリーズはBMWが初めて投入するCセグメントのコンパクトハッチです。また、BMWのバッジを付けるクルマとしては最小のサイズになります。
そして、このクラスにはフォルクスワーゲン・ゴルフという巨人が以前から鎮座しており、1シリーズは、これに真っ向から勝負する宿命にあるクルマなのです。
そのためにBMWが選んだ回答は同社の伝統であるFRの採用でした。
この強力な独自性を持つ1シリーズを、今回は検証してみようと思います。
まず外観からですが、一目で最新のBMWと判る、何とも筋肉質で有機的なフォルムをしています。当初、この一連のデザインテイストはアクが強すぎて、私は嫌いだったのですが、Z4あたりからこなれてきたようで、この1シリーズに至ってはなんの違和感もなく、美しい佇まいを見せています。また、見かけだけでなく、実際の建て付けや造りの良さも文句無しに世界一級のレベルといえます。
ただし、サイズだけには不満があります。幅が1750mmでコンパクトカーとは言えないでしょう。フォルクスワーゲンにはポロやルポという、幅1680mm前後の本当のコンパクトカーが存在しているので、ゴルフのサイズにも意味があるのです。さらに聞くところによると、1シリーズは次期3シリーズのプラットフォームを採用しているとのことで、その3シリーズの幅は1800mmを優に越えるという話です。
安全性を考えるとサイズの拡大は仕方がないとメーカーは説明しているようですが、このへんは技術革新で何とか解決して欲しいものです。
インテリアはこれまた、最新一連のBMWテイストでまとめられており、クオリティーも極上の部類です。1シリーズは7や5シリーズのような豪華装備がない分、インパネまわりがシンプルにまとまっているのも、私には好感が持てました。例によってドライバー中心にレイアウトされた操作系も、いつもながら使いやすいものです。
前席の着座位置はゴルフなど他のライバルに比べると明らかに低く、このクルマがスポーティーであることを主張しています。ただし、窮屈さはまったく感じさせず、前席空間そのものはゴルフよりむしろゆったりしているくらいです。これはAピラーが目の位置から比較的離れているからに違いありません。
一方、後席は必要最小限度といった感じで、シートバックなども薄くて硬く、長時間の使用では多少なりとも不満の声が出るのではないでしょうか。
ラゲッジルームはBMWとしては異例といっても良いほどの広さを確保しています。とくに横幅はリアサスにマルチリンクを採用しているにもかかわらず、充分な寸法（1m）を確保しています。もちろん後席はシートバックだけですが、2:1の分割可倒式で、フラットな荷室面を作り出すことも出来ます。
試乗しました。
バルブトロニック2.0リッター直列4気筒DOHCエンジンに6速ATを組み合わせた120iです。
まず、ドライビングポジションは、欧州車らしくきめ細かく調整でき、最適な位置を得られます。
そして、このクルマもまた最近流行のキーフリーシステム&ボタン式スタートですが、考えてみれば、このシステムを流行らせた張本人がBMWだったのです。もちろん使い勝手は良く、始動もいたってスムーズでした。
オルガン式のしっかりした造りのアクセルペダルを踏み込むと、まったくタイムラグのない、文字通り「比類なき」スムーズで力強い初期加速が味わえます。エンジン音も緻密かつ静かなもので、このフィールのままトップスピードまで到達してしまうのです。以前318tiの時にも書いた通り、やはりこのバルブトロニック4気筒は絶品かつ孤高のエンジンだと思います。このエンジンのためだけにでも、高い金を払う価値はあります。
また、ZF製の6速ATも、ゴルフやクラウンが使うアイシン製6速ATほどスムーズではないものの、メリハリ感ではむしろ優っており、BMWのキャラクターには似合っています。
乗り心地は筋肉質でバネが強い感じです。それでいて、硬いところをまったく感じさせないのは、見事と言うほかありません。特にこの試乗車は、オプションの17インチタイヤを履いているにもかかわらず、です。
取り回しは、運転席からボンネットが見え、左右の見切りも複雑な形状の割に良好なので、不便は感じません。ただし、回転半径だけはFRらしからぬ大きさ（5.4m以上）なので注意が必要です。まあ、実際はフロントオーバーハングの短さで少しは相殺されますが････。
最後に、ブレーキはコントロールしやすく、スポーティーカーにありがちの神経質なところがないのが好印象でした。もちろん、効きは強力で、いざというときには確実に役目を果たすのは言うまでもありません。
総評です。
1シリーズは、初めて登場したラインのクルマですが、いきなり「ゴルフとの両巨頭」と呼べる存在になってしまったようです。やはりFRを選択したのが正解で、1シリーズとゴルフの棲み分けは完全に出来ています。FFとFRには当然それぞれの特徴と利点があり、ユーザーは好みと目的で選べばよいというわけです。
しかし、返す返すも、バルブトロニック4気筒の存在感は一頭地を抜いており、このクルマを魅力的なものにしていると思います。
ゴルフの安定性を取るか、1シリーズの爽快なドライブフィールを取るか悩むところです。
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