気まぐれコラム 第69回 ('03,11,10)



 今回のクルマはホンダのオデッセイです。

 今回のフルモデルチェンジで3代目となるオデッセイは、トヨタのエスティマと並ぶ、日本の3列シートミニバンのパイオニアと言えるクルマです。どちらも日本よりむしろアメリカでの人気が高く、したがってアメリカ人好みのテイストに仕上げられています。ただ今回、オデッセイは車高を1550mmに抑えたというのが大きなトピックスで、そのため宣伝コピーにも「ミニバンを、発明しなおしました」という挑戦的な言葉が踊っています。この「再発明のミニバン」、実力やいかに・・・・、ということで今回レポートしてみたいと思います。

 まず外観ですが、低いと言われる車高より、むしろ広大な(1800mm)車幅の方に目がいく、堂々たるフルサイズボディーのクルマです。体格がいいぶんデザインはコンベンショナルでプレーンなものですが、フロントフェイスなどは、ちゃんとアメリカンマッチョしています。好みの問題でしょうが、アメリカでは確実に支持を得るデザインだと言えます。
 各部の造り、建て付けも、最新のクルマとして文句のない出来です。
 そして、インテリアに目を移すと、ずいぶんにぎやかで未来的なデザインが広がっています。特にブルーのイルミネーションで構成された自発光式メーター・各表示部は立体的な処理がされており、期待感をあおります。私はこのインテリアデザインに決して悪い印象は持ちませんでした。人によってはギミックだと言うかも知れませんが、オーソドックスなクルマばかりが蔓延する今日のクルマの中で、こんなクルマがあっても良いと思うからです。
 シートと室内空間にも感心させられました。車高を1550mmに抑えたにもかかわらず、床面を下げたおかげで、先代モデル以上の空間が得られているのです。また、日産プレサージュなどと違い、3列目シートを補助用と見切り、その分、1列目・2列目シートと乗員スペースをしっかり練り上げて造ったおかげで、実に豊かな気分で乗れる高級ミニバンに仕上がっているのです。それでありながら、3列目シートは巧みな形で折り畳め、2列目シートとも併せて完全フラットな荷室床面をつくることも可能なのです。

 試乗しました。超低排出ガス仕様、i-VTEC、2.4リッター4気筒DOHCエンジンに7速シーケンシャルモード付CVTを組み合わせた「Mタイプ」のFFモデルです。
 乗り込んでキーを捻ると、例のブルーのイルミネーションが、時間差で点灯していき、未来感覚のドライビングを期待させます。シートも大振りなアメリカンサイズながら、しっかりした造りで、ドライビングポジションもとりやすいクルマでした。
 走りだせば、これは確かに車高の低さが利いています。出来の良いLサイズステーションワゴンと、何ら変わらない操縦安定性で、カーブでの足取りもしっかりしています。乗り心地は、ホンダのクルマにはめずらしく柔らかめなものですが、腰砕けな感じはまったくなく、それは、まるで真綿のクッションの上にでも乗っているかのようで、大変好印象なものでした。この点、先に出たCR-Vとは雲泥の差です。
 エンジンとCVTとのマッチングも申し分のない出来です。特にトルコンを介しているため、スタート時のギクシャクがまるでなく、実にスムーズかつフレキシブルに加減速が出来ます。CVTにおいては、ホンダのものが現状ではナンバーワンだと私は思います。エンジンパワーに不足もありません。インパネシフトの操作感も優れています。
 また、ブレーキフィーリングの良さも際立っています。ペダルを踏んだ際の、金属的な反力感はまるでなく、文字通り「真綿で締める」感じです。
 取り回し・左右の見切りの良さにも優れていて、おそらくこの手のクルマでは一番運転し易いクルマなのではないでしょうか。確実にボディーの大きさが把握できるため、狭い日本のインフラでも、苦労は最小限で済むはずです。

 総評です。
 新型オデッセイを一言で表現するなら「アメリカンコットンフィーリング」でしょう。
 このクルマは、操作を通して体に感じるフィーリングが、巧みに統一出来ています。ドアを閉める感じ・シートの掛け心地・ステアリングフィール・乗り味・ブレーキフィール・各スイッチの操作感・・・・。これらがすべて、あたかも真綿を介したかのような感触なのです。こんな感じのクルマは、ちょっと思い浮かばず、あえて言うなら「理想的高級アメリカ車」とでもなりましょうか。
 このサイズ・価格のクルマを許せるならば、私は手放しでこのクルマを薦めます。今回のオデッセイは、数あるミニバンの中でも、ぶっちぎりのナンバーワンと言える出来です。
 少なくとも、この車高でミニバンが成立することが実証された以上、今までの背高ミニバンの存在理由はなくなったと言えるのは確かでしょう。


 
  



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