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今回のクルマはホンダのエレメントです。
エレメントはアメリカのホンダで企画・製造、日本に輸入されてきたクルマです。カテゴリーとしては、同社のCR-Vなどと同じくSUV、RVとなるのでしょうが、こちらはよりカジュアルなテイストであり、明らかに若者をターゲットにしていると思われます。
また、このクルマは両サイドピラーレスの観音開きドアを採用していることが話題になっています。この構造は、広い開口部と開放感が得られる反面、車体剛性、衝突安全性能の面で不利になるため、以前から各社ともコンセプトカーとして発表はするものの、なかなか市販化出来ずにいました。しかし、ここにきて、この構造を持つマツダ・RX-8と、ホンダ・エレメントが矢継ぎ早に登場してきました。資料を見ると両社ともそれなりの工夫を凝らしての市販化であったようです。
今後、観音開きドアはトレンドになる可能性もあり、注目していきたいと思っています。
それでは詳しく見ていきましょう。
まず、第一印象は「でかいクルマだなあ」というものでした。これでもアメリカではコンパクトSUVなのでしょうが、ここ日本では難しいかも知れません。ただし、実寸を見ると、幅1815mm、高さ1790mmはフルサイズと言わざるを得ないものの、全長は4300mmに過ぎないので、一概にでかいとも言えないようです。
エクステリアデザインは1950年代のボルボ・エステートを彷彿とさせる、レトロ調のものです。決してかっこいいデザインではありませんが、そう悪くもないと個人的には思いました。
特に前後バンパーとフェンダーまわり、さらにはルーフサイドまでを覆う樹脂製パネルは、実用性とデザイン性を両立させた優れたアイデアだと思います。このかなりの面積を占める樹脂パネルと、カラーリングされた鉄板部分とのコントラストが実に小気味よく、このクルマの個性を際立たせています。
各部の建て付けは、さすがにこのボディー構造を実現するための補強が効いていて、頑強そのものといった感じです。またエレメントはリアハッチまでが上下方向の観音開きです。下側のハッチを開くとそこに座ることも出来、一見便利そうですが、荷室までのアプローチが遠くなるので、私はこのスタイルのハッチは好きではありません。
インテリアは意外なほど簡素なものです。また、そのテイストは明らかにアウディTTクーペの影響下にあり、フィット同様、いただけません。オリジナリティーは感じられないデザインですが、実用的には申し分ないものです。特に三連ダイヤル式のオートエアコンは使い勝手がよいものですし、車室内全体が撥水・防汚加工された素材を使っているのも美点です。
しかし、シートには不満があります。まずサイズが不足しています。それから前席のサポート性が低いのも気になります。後席は前後スペースこそあるものの、床面が高いため、長時間座っていると足回りに疲労が来やすいと思われます。アメリカ人がこのシートで満足するとは到底思えないのですが････。
また、この後席は左右跳ね上げ式ですが、その際、左右視界が削がれることも問題です。これは欧州車のように取り外し可能には出来なかったのでしょうか。
ラゲッジスペースに不満はありません。全長4300mmということを考えると、むしろ立派と言えるくらいです。これには上下方向の余裕が効いているものと思われます。
試乗しました。超低排出ガス仕様、2.4リッターのi-VTEC・4気筒DOHCエンジンに4速ATを組み合わせた4WDのモデルです。ちなみにエレメントはワングレードです。
まず、着座すると視界の良いクルマです。フロントスクリーンが立っていて、かなり前方にあり、空間に余裕があります。ボンネットも運転席側はよく見えます。
走り出すと、予想に反して実にしっかりした乗り味のクルマです。これはホンダのRV系のクルマでは初めてといっても良いでしょう。ステアリングにも曖昧なところはなく、車高の高さから来る「腰砕け感」も皆無です。この感じは新型アコードに似ていますが、車重がある分、こちらの方が、よりしっとりした上質感のあるものです。開口部の大きいこのボディー構造を考えれば、大いに誉められる乗り味といえます。
取り回しも良好です。真四角なボディー形状のおかげで全方向の見切りが良く、最小回転半径5.2mは、幅1.8m級の4WD車としては異例に小さいので、小回り性能も抜群です。総じて運転はし易いクルマであると言えるでしょう。
ただし、ホンダご自慢のはずのi-VTECエンジンの回転音が、このクルマに限っては「ガーガー」という低級音で、全く興ざめするものだったのは残念です。さらに、ATのシフトが平凡な直列式で、マニュアルでシフトしようとするとミスシフトする確率が高かったのもマイナスポイントです。
総評です。個人的には、ホンダのRV系のクルマの中では一番良い出来だと思いました。ただし、この開放感たっぷりの観音開きドアの恩恵を受けるためには、それなりのインフラが必要です。なにしろ、都心の狭い地下駐車場などでは、このクルマは不便さの固まりのような存在と化してしまうのですから。
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