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今回のクルマはトヨタのウィッシュです。
5ナンバーサイズの7人乗りミニバンでありながら、よりセダンライクでスポーティーなクルマ････。ウィッシュにとってはそれがすべてです。これだけコンセプトのはっきりしたクルマも珍しいのですが、それには多くの人が気付くであろう理由があります。ホンダのストリームというクルマの存在です。
そうです。言葉が悪いのですが、ウィッシュはストリームの成功を横目で見ながら、急場しのぎで造られたクルマなのです。しかし、そこは後発の利を生かして、少しでも良いクルマにしようという意志が働いているだろうことは想像に難くありません。
それでは詳しく見ていきましょう。まず、そのサイズですが、4550/1695/1590mmと、ストリームと全く同じです。この事は逆説的にいえば、ストリームの設計思想が間違っていなかったということなのでしょう。
外装デザインはアクのないあっさりしたものです。これもトヨタ流で、日産のように斬新なデザインで勝負しようとは、はなから考えていない節があります。しかし面や線の処理に破綻したところはなく、急ごしらえのクルマとしては、これはこれで納得いく仕上がりだと私は思います。特にサイドウインドウのグラフィック処理はストリームとの違いが最も現れているところです。
インテリアデザインも見慣れたトヨタ流です。ウィッシュはスポーティーさを前面に出したクルマなので、こうなったのでしょうが、この黒ずくめのインテリアも、そろそろ飽きてきました。何か新しい提案を期待せずにはいられません。
各部の建て付けも最新トヨタ車のレベルで、そこそこ、しっかりしています。ダッシュボードまわりのデザインは使いやすいものですが、これまたストリームと瓜二つというのは、いかがなものでしょう。インパネシフトは私もベストの仕様だと思いますが、空調類スイッチの配置はこれがベストとはどうしても考えられないのです。
シートの造りは欧州車風のコシのあるしっかりした感じのものです。運転席シートリフターがラチェット式になったのも嬉しいかぎりです。このように、第1列に関して不満はありません。しかし2列目、3列目は決して居心地の良いものではないです。ストリームにしてもそうですが、5ナンバーサイズの中で7人乗せるということにこだわると、こうなるのは仕方がないのでしょうか。
3列目シートの居心地がストリームより優れていると、盛んにディーラーではセールストークを繰り広げていますが、どっちみち、エマージェンシー用のレベルを超えたものではないと私は思います。
しかし、2列目3列目を畳んだ状態のラゲッジスペースには魅力があります。多少隙間はありますが、フラットなそのスペースは、ステーションワゴンでは決して得られない広さを確保しています。
試乗しました。超低排出ガス仕様、可変バルブタイミング付1.8リッター4気筒DOHCエンジンに4速ATを組み合わせた2WDモデルのXというグレードです。ちなみにウィッシュには今後、2リッター直噴エンジンに新開発のシーケンシャルモード付CVTを組み合わせたモデルが追加されるそうです。
乗ってみれば、いつものトヨタ車です。このクルマのプラットフォームは、欧州カローラのものとも、プレミオのものともいわれていますが、どちらにしても完成されたものです。しなやかさよりもしっかりさを感じさせる乗り味が、このプラットフォームの特徴ですが、このウィッシュに限っては、ミニバンというボディー形状のせいか、若干グニャグニャした感じが垣間見られました。かといって、問題があるようなレベルではなく、総体的に見れば、良くまとまった乗り味を実現していると言えるでしょう。
各部の操作感もしっかりしていますし、ステアリングの切れ、ブレーキの効き、小回り性能も適切です。特にスタッカートゲート式のインパネシフトの操作感は絶品です。
ただ、ボディーの見切りだけは、慣れが必要だと思いました。
最後に総評です。
プレミオ・アリオンやヴォルツの回でも書きましたが、このクラス(1.5トン未満)のクルマに、この1.8リッターエンジン(1ZZ-FE)と4速ATとのマッチングは本当に良いものです。価格を含めたトータルバランスで、この組み合わせの右に出るクルマはないでしょう。確かにスペックの上ではストリームの5速ATやCVTも魅力的ですが、実用の道具として考えると、トヨタに軍配が上がると私は感じています。
また、オプションながら、サイド・カーテンシールドエアバッグとイモビライザーが用意されているのも、好感が持てます。
ただし、立体駐車場にかろうじて入れない1590mmという車高は、7人乗せるという目的とのトレードオフとしては、あまりにも大きい代償でしょう。
できれば、トヨタには、既存のコンセプトの後追いではない、新しい5ナンバーユーティリティーカーを、ぜひ作ってもらいたいと私は願っています。
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