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今回のクルマはホンダのモビリオです。
このクルマは同社のフィットをベースにした7人乗りのミニバンです。一応トヨタのスパシオのライバルという位置付けでしょうか。それにしても日本車にはこの手のクルマが多いと思います。確かに売れるのでしょうが、もうそろそろ何か新しい提言がメーカーからあっても良いと思うのですが。
外観の第一印象はステップワゴン・ミニといったところ。カタログを見るとヨーロッパのトラム（路面電車）がモチーフになっているということです。確かにサイドのウインドウデザイン等にはその印象はあります。しかし全体としてみると、どこか凡庸です。本家のトラムのデザインにはもっと洗練された「キレ」の様なものがあります。ほんの些細な意匠の差でしょうが、その差の大きさを感じずにはいられません。
建て付けの良さは最近の日本車の例に漏れず、そこそこにしっかりしています。前ドアが若干ながら斜めに開くというのも実用性を考えていると思います。ただし巨大なリアハッチの開閉だけは何とかならないものかと思います。例えば折り畳みながら開くとか、何かアイデアがあると思うのですが････。
乗り込んでみると、このベージュの内装はなかなかいい雰囲気を感じさせます。質感は価格相応のものです。最近のホンダのクルマは皆そうなのですが、割り切りがはっきりしています。良く言えばシンプル、悪く言うとチープな感じなのです。この点がトヨタとの違いと言うことになるのでしょう。私はホンダにもハイクォリティーバージョンがあって欲しいと思うのですが、どうでしょうか。
シートの造りには不満があります。ウォークスルーを実現するためでしょうか、前席の座面にコシがなく、運転席に座るとサポート感の不足をはっきり感じます。これはステップワゴンにもいえることです。いくらミニバンといってもクルマの基本は運転という行為にあるのですから、改善を望みます。
2列目、3列目シート共にシートの造りも必要最低限という印象は否めません。やはりこのサイズに3列シートを配置するには無理があるのかも知れません。シートアレンジの点ではフィット同様燃料タンクが前席下にあるため、自由度が増し、多彩です。
試乗しました。1.5リッターエンジンを積むAタイプのFFモデルに乗りました。
運転姿勢はミニバンの標準といったところ。良くも悪くも背の高さを意識します。それからシフトレバーはステアリングの横に位置するインパネシフトで、これはなかなか使い勝手がよいものです。シフトボタンの位置なども良く、ここはトヨタのノアのものよりも良いと感じた点です。カーナビもインパネ中央の最上部にセットでき、この点も及第点です。
走り出すと、まず、がさついたエンジン音が気になります。フィットより重くなった車重に対応すべくストロークアップして排気量を増やしたことが仇になったのでしょう。フィーリングもフィットのような軽快感のある滑らかなものとは違って、ごく普通の印象です。このへんはエンジンのホンダと言われるほどのメーカーですから、今後の改良、熟成を望みます。ただ気になったのはそれだけで、相変わらずCVTの出来は良く、エンジンブレーキを使うときに必要なSポジションへの変速がシフトレバーのボタンひとつで出来るのも便利です。電動のパワーステアリングの感じも自然で、2740mmもあるホイールベースの割には小回りも利き、車幅の感覚も掴みやすいので運転はしやすいと思います。
それに印象的だったのはサスペンションの出来です。フィットの時は若干跳ねる感じがしたのが、これも車重のせいか、ちょうどいい感じになっています。背の高さから来る不安感もやっとなくなりました。この点では、ずっとトヨタ系のクルマが良いと書いてきましたが、このモビリオで対等になったといえるでしょう。ただし両社のフィーリングにははっきりと違いがあります。しっかり感のホンダ、しっとり感のトヨタ････、どちらを好むかはその人の好みです。
さらに運転中の車内のがたつき（ゴトゴト音）が異例なほど少なかったというのも、ミニバンとして最新設計のクルマらしい美点だと言うことを付け加えておきましょう。
最後に総評です。この手のクルマは出せば売れるという状況だそうなので、とやかく言いたくはありませんが、いい加減にしたら････といいたいのが本音です。本当に7人乗って使うクルマにこのサイズが適当なのか、安全性を含めてよく考えて欲しいと思います。確かに低価格で提供するという意味はあるでしょう。しかし、これからの時代は本当に必要なものにそれ相応の出費をするという方向に向かっていくと思うのです。
そのような点からこのクルマも、いくら出来が良いからと言って積極的に奨めることは出来ないと言うのが私の結論です。
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