|
今回のクルマはトヨタのノア、VOXYです。
このクルマは先に発売されたイプサムと共通のプラットフォームから生まれたクルマです。あちらは主にヨーロッパで売るためのクルマなので排気量も2.4リッター、サイズも3ナンバーと日本で使うにはちょっと大きい感じが否めませんでした。そこで日本向けに2リッターで5ナンバーサイズのこのノアとVOXYが投入されたというわけです。さすが無借金経営のトヨタといえる抜かりないモデル展開です。さらにこのモデルはホンダのステップワゴンに照準を絞っているらしく、あらゆる面で対抗意識が見て取れるというのも興味深いところでしょう。
また先代のノアは旧態然としたFRのワンボックスでした。それがFFミニバンに変身を遂げたということなので今回取り上げることにしました。
外観のデザインは先代のノアの進化系といった感じで、そんなに新鮮な感じはしません。VOXYの方は若干モダンなテイストとなっていますが、よく見てみるとちょっとしたパーツの違いでしかないことに気づきます。どちらかというと直線基調のデザインですが、何となく野暮ったい感じが拭えないのがこのトヨタというメーカーの証なのかもしれません。同じデザインテイストのクルマに日産のセレナがありますが、あちらの方がずっとモダンでシャープに見えます。
しかし造りはしっかりしていてここはトヨタの面目躍如といったところでしょう。ドア、ハッチの開閉感もこの大きさの割には良いものです。また左右両開きのリアドアのオート機能などもステップワゴンを研究した跡が見て取れます。
内装の方もトヨタ流で上質でそつなくまとまっています。特にセンターメーターは手慣れたもので、もう全く違和感は感じなくなりました。特にノアとVOXYはこのメーターパネルが非常にワイドでトヨタのセンターメーターの中でも一番見やすいと思いました。また2DINのオーディオスペースも良い位置にありこれもマルです。ダイヤル式のオートエアコンも使いやすいデザインです。小物入れも豊富です。しかしATのシフトレバーはイプサムの時にも書いたのですが、スパシオ式のインパネシフトの方がよいと思います。
シートの造り、アレンジ、室内空間の取り方なども充分なもので、ここでもステップワゴンを意識しているようです。ただ二列目三列目のシートは折り畳めるだけで取り外しが出来ないというのが唯一の不満点でしょうか。
試乗しました。ノアのLというグレードの2WDに乗りました。
エンジンは全車共通の2リッター直噴ガソリンエンジンです。これはトヨタの直噴としては新世代といえるもので、以前の直噴エンジンで感じたかったるさはほぼ解消しています。音も回転感覚も最新のアルミ製エンジンらしく、シュンシュンと軽快にまわります。これならステップワゴンのi-VTECエンジンといい勝負かもしれません。
乗り味はイプサムと良く似たものです。ただ車高がかなりあるためあちらほどきびきびした感じはなく、どちらかというと安定志向です。といっても車高の高さを感じさせるような不安感とは無縁です。この手の背の高いクルマの操縦安定性ではトヨタが一頭地を抜いていると思います。車格なりの重厚感もあり、このクルマにはふさわしい乗り味といえるのかもしれません。
ATは4速で実用上問題はないのですが、出来ればCVTか5速のものがあれば良かったかなとも思います。そうすればステップワゴンとの差別化がよりはっきりしたでしょうから。
総評です。一言でいうならやはり「そつのないクルマ」ということになるでしょうか。オプションも含めての装備の充実度も国産では一番でしょう。このクルマを購入して失敗したなと思う人は少ないはずです。しかしイタリア車のようにぞっこん惚れ込む人もまた少ないと思うのです。
これはトヨタのクルマの宿命なのかもしれません。
|